認知請求事件の解決事例

結婚をする前提で交際・同棲をしており、女性が妊娠をしたために男性に対して入籍を希望したところ、男性はこれまでの態度をひるがえして、「結婚をするつもりはない、子どもについては産んでもらってもいいが、認知はしないし養育費については支払えない。」などと言い、自宅から出て行ったというケース
※個人情報保護のため内容は多少カスタム及び複数の事案を混ぜております。なお、残念なことに不誠実な男性の対応は概ね共通しております。

本件では、男性は引っ越し先を女性に教えず、連絡先も変えられてしまっていたため、女性としてはどうすることもできず、困り果てて、当事務所にご相談に来られました。

このような場合は、次のような対応をする必要が出てきます。
①相手方の所在の把握
②認知の請求
③養育費・慰謝料の請求
④給料等の差押え
 
①相手方の所在の把握
このような場合、まず相手方の所在の調査から行うこととなります。
相手方の所在は、住民票や電話番号、車のナンバー等から割り出していきます。
本件では幸いにして相手方所在地を割り出すことができました。
 
②認知の請求
相手方に対しては、認知の請求を行っていきます
非常に残念なことに、男性がこのように一方的に別れを告げる場合、素直に認知に応じてくれることはほとんどありません。
むしろ、「自分の子ではない」などと主張してくるケースがほとんどです。
本件でも「避妊はきちんとしていた。自分の子ではない。」という主張がなされてきました。
そのような場合、認知を求めて裁判所に対して提訴をすることとなります。
 
1.認知を求めての調停提起
認知請求の場合、まずは調停を起こす必要があります(調停前置主義といいます。)。
ここでDNA鑑定などを行って、その結果を基に話が進めばいいのですが、上記ような主張をする相手方ですから、DNA鑑定にも応じることはありませんでした。
(不合理に思えるかもしれませんが、裁判所から相手方に対してDNA鑑定を強制することもできません。)
個人的には、身に覚えのないことであれば、DNA鑑定をして自分と関係ないことを示せばよいと思うのですが・・・
 
2.強制認知を求める裁判
調停で話がまとまらない場合、次に強制認知を求める裁判を起こすこととなります。
ここでもDNA鑑定が大きな判断材料となるのですが、やはり相手方はDNA鑑定には応じませんでした。
相手方がDNA鑑定を拒否しているという事実をもって、裁判所としては相手方が父親であろうと考えてはくれますが、その事実だけで判決まで出すことはせず、裁判所としては他に相手方が父親であると思われる証拠を求めてきました。
そこで、相手方が父親であると思われる証拠(性交渉があったと思われる事情や相手方がそれら認める発言を行っている証拠等)を「これでもか」と集めて裁判所に提出しました。
その結果、裁判所から、相手方を父親であるとして強制認知を認める判決が下されました。
 
③養育費(及び慰謝料)の請求
認知を求めるのは、養育費を請求するためです。(また、相手方が亡くなった場合は相続権の有無にも影響します。)
小さい子供を育てながらではどうしても働く時間が短くなったりして、収入が少なくなってしまいがちです。
また、子どものミルク代、おむつ代、衣類、教育費など様々な費用が掛かってきます。
その負担を少しでも軽減するためのものが養育費です。
本件では、相手方は強制認知の判決が出たにもかかわらず、「認知は裁判所が勝手に認めたものであり、自分の子ではないから養育費は支払わない。」などという無茶苦茶な主張をしていました。
そこで、やむを得ず養育費を求めて裁判所に提訴することとなりました。
 
1.養育費を求める調停
養育費も最初に調停を起こさなければなりません。
やはり相手方は調停でも上記の主張を繰り返し、調停は不成立に終わりました。
 
2.養育費をもとめる審判
養育費を求める調停が不成立に終わった場合、次に審判という手続きになります。
これは裁判所が強制的に内容を決める(=判決を下す)という意味で、裁判の判決と同じものです。
養育費は、相手方の収入状況とこちら側の収入状況、その他の事情を考慮して決められます。
本件では、相手方は自分の収入に関する情報を一切出さず、「金がない」という主張しかしなかったため、方々手を尽くしてこちらで相手方の収入に関する資料を入手し、提出しました。
その結果、裁判所は相場通りの内容で審判(=判決)を出してくれました。
 
3.慰謝料を求める裁判
本件では、一方的に婚約の破棄もされたので、その点についても慰謝料を求めて提訴しました。
婚約は基本的にお互いの合意によって成立するものではありますが、「結婚の約束」も様々です。
(付き合った初日の「結婚しようね。」という言葉と10年付き合った上での「結婚しようね。」は重みが違います。)
「婚約」の事実については、様々な事情を総合考慮されるのですが、本件では数年間同棲していた上に妊娠しており、親に結婚の挨拶をして、結婚式場の下見まで一緒に行っておりました。
それらの証拠関係を示し、婚約の事実を立証し、それを不当に破棄したものとして、慰謝料が認められました。
 
④給与の差押え
養育費と慰謝料を支払えという内容の審判・判決がでたのですが、やはり相手方は任意での支払いを拒んできました。
幸いにして本件では勤務先の把握に成功したことから、勤務先の給与を差し押さえを行いました。
おそらく勤務先に裁判所から給与の差押え通知が来てバツが悪くなったのでしょうか、ようやく毎月任意で養育費を支払うようになりました。
 
【まとめ
本ケースは、相手方の所在把握から認知請求、養育費・慰謝料請求、強制執行と、いわば認知トラブルに関するフルコースとなり、裁判期間は実に2年以上に及びました。相手方も最初から素直にDNA鑑定に応じていれば白黒はっきりつくものを、往生際が悪く、相手方もこちら側も余分な時間とコストを要してしまいました。
ろくでもない相手方を早く忘れたくて、「あんな相手は子どもの父親ではない」、「もう関わりたくない」と認知や養育費を求めない方もいらっしゃいますが、妊娠・出産は子どもの一生に関わる問題ですし、子どもの養育には費用もかかります。
回収可能性という別の視点も必要ですので、まずは冷静になって一度当事務所にご相談にいらっしゃってください。