相続ってどうして揉めやすいの? その①

 10月22日から向井理さん主演のドラマ「遺産争族」が始まります。昔から大富豪の遺産相続に殺人事件と名刑事、名探偵はセットでしたが、遺産相続そのものに焦点を当てたドラマは「遺産争族」が初めてではないでしょうか。

 さて、相続トラブルは最近本当に多くなってきましたが、どうしてこんなことが生じるのでしょうか。まだこのドラマが始まっておりませんので、どのような展開になるかはわかりませんが、当事務所で取り扱ってきた事件でも遺産相続に関するトラブルは福岡市・古賀市・宗像市・北九州市と地域を問わず、大変多くありました。

 まず、相続争いは、推定相続人である子どもたちの一人が、判断能力が低下した親をお世話するところから始まっているケースが多いです。世話をしている人は、「自分はこんなにがんばって世話をしたんだから、遺産は多くもらいたい」という気持ちが出てきてしまいます。
 しかし、他の兄弟は、その世話がどの程度のものか分からないため評価がしにくいばかりか、ともすれば「世話にかこつけて親の財産を自由に使っている」と思い込んでしまうこともあります。このような兄弟姉妹間の認識のずれが相続トラブルの一番の原因です。
 
 もっとも、実際に親の判断能力が低下したのをいいことに、その財産を使い込むケースもかなり多くあります。当事務所が対応した案件にも「10年以上にわたって数千万円を使ってしまった」というケースもありました。これはその②以降でも述べますが、一言で言えばです。最初はちょっとした金銭の使い込みのつもりが、月に3万円、5万円と増えていきます。月に5万円でも10年使い込めば600万円になってしまいます。

 このような事態を防ぐためにできることは、親の立場、子の立場からそれぞれにあります。

 
①親(本人)ができること
 親ができることは、自分の判断能力が低下した時に備えて、「任意後見契約」をしておくことです。
 「任意後見契約」とは、任意後見契約とは、将来、判断能力が低下した時に備えて、自分の信頼できる人に後見人になってもらうように契約をする制度をいいます。任意後見契約といわゆる成年後見人の制度の大きな違いは、後見人を自分で選べるかどうかです。
 成年後見の申し立ては家庭裁判所にするのですが、誰を成年後見人にするかは裁判官の判断になります。そうすると、信頼している親族や専門家がいるのに、全然違う人が財産を管理することになります。もちろん、裁判所が選任する専門家ですので、しっかりしていますが、任意後見契約は後見人を自分で選べるという点で、自分の想いや家族の事情をしっかりと分かった人に任せられるので、より安心できます。

 
②子(家族)ができること
 子の立場でできることは、まず、可能であれば財産状況をきちんと把握することです。兄弟姉妹間で財産状況をみんなで把握しているだけでも、不正な使い込みに対するけん制になります。もっとも、親の判断能力の低下して、同居の子が親の囲い込みを始めた場合、そう簡単に財産状況を調べることはできません。
 その場合、家庭裁判所に対して「成年後見の申し立て」をすべきです。成年後見の申し立てをすれば、成年後見の開始決定後に正当な権限のもとで財産調査を行うことができます。
 成年後見が開始すれば、財産を濫用されるおそれは少なくなります。しかし、それでも親族が成年後見人になっている場合には、その権限を濫用されるおそれはないとはいえません。
 そのための制度として、「成年後見監督人」の選任を申し立てることもできます。

 

 ご自身の判断能力の低下に備えた準備、及びご両親の判断能力が低下してきたと感じた場合にはIK法律事務所にお気軽にお問い合わせください。相続・成年後見等の高齢者問題を得意とする弁護士がご対応いたします。